絵描きのナナシさん1【電子書籍】[ 川崎 キヨ ]
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かなり浮世離れをした絵描きがいました。
名前は「74」と書いて、「ナナシ」さん。
文字通りの「名無し」という意味なのか、「74」という数字に特別な意味があるのか、それとも本名なのかはわかりません。
だって、誰も彼と会ったことはないのですから。
ナナシさんんは大きなリュックサックを背負い、全国を旅しながら、今時珍しいガラスペンで絵を描いています。
そして、自身のホームページで描いた絵を出展して売っています。
しかも、毎回高値で取り引きされます。
それだけ、世界中にファンがたくさんいるのでしょう。
ただし、雑誌やテレビに出る訳でもなく、積極的にSNSをしている訳でもないので、その正体は謎に包まれています。
いろいろな噂話も出ていますが、ナナシさんんはそれにも気付かないで、今日も自由気ままな一人旅を続けながら、大好きな絵を描いています。
たった今、一体何処で何をしているのやら。
「お客さんん、絵がうまいねエ」 店内の壁の鳩時計が夜9時を少し回った頃、この店のオーナー兼シェフ兼唯一の店員でもあるヤマギシさんは、カウンター席に座り、たった一人だけのお客の絵を見て言いました。
ここは駅前から少し離れたところにある老舗の洋食屋さんです。
外壁が煉瓦作りの建物自体が古いのは仕方がありませんが、それにしたって、何だか店内が妙に薄暗く、廃れている感じがじんわりと滲んでいます。
今から1時間前のことだったでしょうか。
この店に、ふいに1人の若い男性(?)がTシャツにジーパンの格好をし、大きな黒いリュックサックを背負って現れました。
若い男性(?)は食事を終えると、おもむろにリュックサックからガラスペンを取り出すと、サササッと紙ナプキンに鳩時計を描き始めました。
その絵はとても趣があって、鳩の表情がとても可愛らしいものでした。
そして、何よりそのお客の絵を描く姿がとても楽しそうで嬉しそうなので、ヤマギシさんはつい声をかけたのです。
そんなヤマギシさんですが、理由があって、30年も続けてきた店を閉めるという決意を胸に秘めていました……。
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